「聞いたことも…ないと言うことですか?」
何を驚いているのだろう。
私に許嫁?
聞いたことがない。
「ありませんが。」
「そう…ですか。正直、予想もしていませんでした。」
あぁ…。駄目だ。
先程から頭に浮かぶのは“意味がわからない”の8文字。
それ以外に浮かびようがない。
「はっきり、申して下さい。」
「…わかりました。私と黄泉様は…幼い頃からの許嫁です。」
…頭のどこかで予想はしていたが。
こうもはっきり言われると…動揺する。
「誠に…御座いますか?」
「はい。幼き頃から私と黄泉様は…婚約することが決まっていました。
…私は、今まで黄泉様に文や歌を送っていないことを今日、詫びろうと思っていたのですが…まさか存じなかったとは…」


