太陽が沈み、季秋の月が顔を覗き出し始める頃。



「さぁ、始めるぞー!」



陽気な声が古びた小さなアパート全体に響き渡る。



その声を聞いて、月はほらねと言うように今夜も美しく光り輝き始める。



ここは関西のとある町。



そして、この声の発信源は二階の一番左奥の部屋。



203号室。



表札には、かまぼこの板に手書きで書かれた桜井駿という文字。



そう、何を隠そう203号室は僕の住処であり、桜井駿とは僕の名である。