One Way Ticket 2

「まぁ召し上げれ。」

仁は何も変わっていなかった

カクテルを華麗に造っていく

「おいしい。」

空元気も仁の前では出す気になれなくて
素直な気持ちで
素直な私でお酒と葡萄を食べた


「那智とはどう?」

「・・・別に」


口ごもって俯く私

仁のため息が聞こえた


「始まったよ・・・お前の悪い癖。」

カウンターに両腕を着いて私と向かい合うように
仁は顔を近づけた


「悲劇のヒロインぶって一人で悲観的になってんじゃねーよ。
 お前は何を知ってるんだよ?
 それは本当に真実なのか?」


仁の言葉に何も言えなくなってしまう

・・・

・・・

悲劇のヒロイン・・・
そんなつもりじゃなかった


ただ
あの女(ひと)の言葉が・・・


“それは真実なのか?”


真実?


何が真実なの?

事実
那智は“那智の女”を知っていて

“美那子”

そう呼んだ・・・


それが真実なんじゃないの?