One Way Ticket 2

「これで手を打たないか?」

ニヤリと微笑む仁。
私は目の前に置かれた葡萄の山と仁の顔を交互に見る・・・

ヤバイ

涎たらしそう

「頼むよ。
 お前の専門学校って都内でも有名な美少女校じゃん!」

そう
つい先日雑誌の特集でうちの学校は
都内で美少女が多い専門学校として取り上げられた。

それから
やたらと学校の前とか駅に男が増えて
こっちはいい迷惑。


別に私が美少女なわけではない。
そこだけは確か。

だけど

この葡萄。


この葡萄が曲者だ。


ずるいよ仁!
私が無二の葡萄好きって知っててこういうことするんでしょ?


でも・・・
気づいたときには
もう葡萄が口の中で
すばらしい甘みと酸味を出していた。

負けた・・・。


「食った!
 食ったからには千香。頼んだぞ!」

してやったり顔の仁・・・。
悔しいけど私の負けだ。
葡萄の誘惑にだけは勝てないよ。

「人数は?」

しぶしぶ聞く。

「とりあえず4:4で。
 あっ、お前も来いよ!」

当然のように言われて私は手に取った実を落としそうになった。

「なんで?」

私よりも先に言葉を発したのは那智。
仁を軽く睨み付けているように見る・・・

少しあせる仁と驚いて実を床に落としてしまった私。

「え?・・・あっ、あれだよ。
 いきなり俺たちと4:4でセッティングされても
 女の子たちはきっと困るだろ?
 だから、千香がいたほうが馴染むし楽だと思ってさ。」

挙動不審な仁は面白かった。
まるで豆鉄砲を喰らった鳩みたいで

私はチラッと那智を見上げる。
真剣な顔・・・。