One Way Ticket 2

助席に座って那智を見る

「なに?」

いつも通りの那智・・・

「え?
 あぁ・・・今日は行きたいところがあるんだ。」

実は前から行きたかった場所

「いいよ。」

そう言って車はゆっくり走り出した。


過ぎていく景色を横目にちらちら那智を意識して見てしまう

なんかおかしいよ
自分・・・

冷静になってよ


「千香、ここ真っ直ぐでいいの?」

気がつくと景色は都会の喧騒をなくし
静かな森へと変わっていた

「あ。ここで止めて。」

整備された駐車場に車を止めて
外に出た


ゆっくりと深呼吸をする

自然のきれいな空気が流れ込んで
緑で体が満たされる

「ここは?」

那智が辺りを見回して言った

「八重ヶ樹神社。見てあの大鳥居。」

私は左前方に聳え立つ
ビル2階分に匹敵する
紅の大鳥居を指した

「今日はねここの神社のお祭りなの。」

「祭り・・・?
 人なんてほとんどいないのに?」

確かに私たちのほかには人の姿はほとんど無く
出店はおろか
提灯すら無かった

困惑する那智の腕を引いて
私は鳥居をくぐった


「出店を出して、大勢の人で賑わって
 騒ぐのだけがお祭りじゃないんだよ?」

鳥居をくぐって
林を抜けると
幻想的な世界が現れた