この二人は夫婦だ。普段は実年齢よりだいぶ若く見られて、愛らしい仕草が印象的な女性。威厳と慈愛に満ち溢れている、体格のよい白髪混じりの男性。

さらに二人には一人娘が居た。美乃。母親譲りの愛嬌の良さと、父親譲りの根気を兼ね備えた女の子。明るく、元気で、可愛い子だった。友達も沢山いた。


その内の一人が今ここに佇んでいる、蒼空音。彼女は友達の中でも特別な、幼なじみ兼親友という座に居たのだ。
そう、居た、のだ。


恐らくそれなりに高価であった紙は、それ以上語ることはない。紙はただ白く、黒い文字で埋め尽くされている。紙がその内容を書き換えることなど有り得ない。