「み、がっ…の、が…。」

岩塚は、はきはきとした強い口調が特徴の女の子。その子がここまで歯切れの悪い電話をよこすのだ。


もしかしたら、と、柏木の頭に浮かんだある悲劇。いいや、そんなはずはない。払拭しようと必死に頭を振った。なのにそれはまとわり付く。


「岩塚、落ち着いて。何が、あったんだ?」


冷静さを欠いているのは柏木も一緒である。岩塚からの言葉を聞きたいのだが、同時にすぐにでも電話を切りたい気分になっている。汗の量ももはや尋常ではない。

すー、はー。岩塚の深呼吸をしている音が聞こえる。柏木も深呼吸をした。次の台詞を覚悟して。