「今、部屋を出るところ。」




「お客様がお見えになって・・・」


「え。だってまだ……」



「そうなんです。
それで朝の散歩に出てるといいました。
携帯は持ってないから
連絡はとれないと・・・・・
急いでください。」



料理長もパニくっている。


不安に顔を見合わせた。



帰りの道を飛ばす。


二人の心には
不安が渦巻く。


しっかりと握った手だけが
大丈夫と確かめ合う。



「愛してる。」
倉之助が言った。

「私も世界中であなた一人だけ。」



門柱の近くで車を降りた。



「行って、倉之助・・・・」

私は倉之助を見送って
有栖川 楓 に戻る。