「滝澤さ~ん」

介護士が入ってきた。


「あら?お嬢様!!」

私はシーと制した。



「今日は、お話できたでしょう?」


「はい。」


「めずらしくしっかりしてるのよ。
その繰り返しで
記憶が失われていっても
小さな女の子と息子さんのことは
忘れないみたい。」



「じぃはずいぶん弱ったんですね。」



「病気もあるからね。
でも芯のある人だから…」



「病気って?」


「もうずいぶん前に胃ガンで
胃を全摘してるんですよ。
今は体力が落ちたから
こうして腸から栄養を入れてあげるんです。」



知らなかった・・・・

「お嬢さん、またお話しましょう。
なんだかお嬢さんを見ると
楓さまを思い出して…嬉しくなります。」


そう言って
目を閉じた。


私は大人の階段を上っているけど
じぃにはいつまでも小さな楓が
笑っているんだね。