勢いよく荷物をつかんでいる手を振り上げ、突進してくる。

私は反射的に身を守る状態になり、目をつむる。


「いっ…」

…?

決して私ではない声がした。

「あんたねぇ、この私が藍をよろしくって言ったんだから、ちゃんと守りない!!助けなさい!!そして、すぐ隣りにいたんだからちゃんと見てなさいよ!!あんた隣りにいて何をしてたの!?あんた自分が他人からどう思われている存在なのか…」

と延々と続く夕希の怒鳴り声。

ん?何が起きてるの?

恐る恐る目をあけると隣りにいる王子がしゃがみ込んで足(俗にいう「弁慶の泣き所」)を押さえている。
夕希が持っていたであろう荷物(私のバッグもある。つまり2人分の荷物だった訳だ。)は王子の足元に転がっていた。

「もうっ!!ホントになんなのよ!!」

と腕を組みながら最後に夕希がぼやいた。
王子は立ち上がり、顔を悔しそうに歪ませた。

「ごめんなさい…」

か弱い…王子の声なんて初めて聞いた…。

その隣りの城田君は夕希を見ながらポカーンとしてて、急いで顔を戻してから王子を面白そうに見ている。