「小村さんは照れ屋さんなんだね。かわいいなぁ」
普通なら、「かわいい」と男の人に言われたら照れる。
何で?私、この人の言葉に全くときめかない。
むしろ、軽蔑の目で彼を見てしまうのは何で?
「小村さん」
私が幸彦を睨んでいると、幸彦が私に微笑みながら言った。
「心配しないで。僕、彼女いないから」
まるで分かってるかのように言ったよ、この人。
誰もそんなこと心配してない。つか、心配なのはあんたのその自信だよ。
気づけよ!
…なんて、言えるはずもなく。
「そーなんだぁー」
と、一応作り笑いをしておく。
しかしその間、幸彦はまた自分の顔を鏡で見ている。
人の必死の笑顔をスルー。

