「え…あの、」


俺は耳を疑った。
だって、あの千夏姉が?元気が取り柄の、あの千夏姉が?
『かいとくん!あそぼうよー』って、いつも俺に言って、どんな時でも明るい千夏姉が…



脆い?崩れる?


千夏姉には相応しくない言葉だろ?そのはずだろ?


目を丸くして、早苗さんをみた俺は、どうか嘘であって欲しいと願っていた。

でも、本当なんだろう。早苗さんの目は、まっすぐ真剣だった。


「あの子ね、『運命なんて無かったんだ。私は最悪だ。』ってさ、
ベッドで泣きながら呟いているんだよ。その意味は分からないけど、ね。」

「…」


黙ってしまった俺は、また歩み始める早苗さんの背中を見つめるしかなかった。



「誰かが…支えてくれる誰かが現れると良いんだけど……ね」


そう呟やかれた声に、俺の口は動き出した。


「早苗さん!!」

「…」


思わず呼び止めた俺に、早苗さんは黙って振り返る。



「俺!!千夏姉を守ります!!
千夏姉の…騎士になってやる!!!!!」



周りの人なんて気にしない。
無我夢中で叫んだ。