俺は、昔から早苗さんに顔があがらない。
早苗さんは、多分…いや、絶対に勘が鋭い。


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「おぉい、そこの少年♪」

「はい?」


俺がまだ幼い頃…まぁ小学生とか中学生前半とかだったと思う。
下校中、突然背後から声をかけられた。

その声は、聞いたことがある声で、とりあえず振り返って見た。


通りで聞いたことがある声だ。


「早苗さん…」

「よっ!恋悩む少年よ」


しらないはずないじゃないか。すっかりスーツ姿がきまるようになったこの人は…



好きな人のお姉さんなんだから。って…


「恋悩む少年ってなんですか」

「んー…まぁ、私のあ・く・ま・で予想なんだけどぉ…


海斗君は、うちの可愛い妹に恋をしちゃったみたいな??」


この人はエスパーかなんかか?

ていうか、なんで知ってる?

ずばりと言い当てられた俺は、ただ、その場で立ち尽くすしかなかった。


そんな俺を、早苗さんはクスッと笑って、俺に近づいてきた。


すれ違う寸前、早苗さんは一度立ち止まった。
そして、告げられた。



「あの子、物凄く脆い子なのよ。…柔順でね、素直なだけなの。でも…

多分、そのうち崩れちゃうんじゃないかな」