目を開けたら最初に目に飛び込んできたのは真っ黒い毛だった。


「これは」


手を伸ばして触ろうとしたが身体中に痛みが走り触れることは叶わなかった。

次第に意識が覚醒したのか自分の上に何かが乗っかっている事に理解し黒い毛が何やら足踏みしているようで足踏みする度に身体が悲鳴を上げている。

「痛い痛い」


「みゃぁ」


随分低い鳴き声がし黒い毛が向きを変え顔を此方に向けてきた、どうやら自分の上に乗っているのは金の瞳をした黒猫だった。

「目が覚めたんなら早く起きな」


…………驚きだ、初めて猫が話したのを見た。



自分の上からその容貌とはかけ離れた可愛げの無い台詞を述べて黒猫は飛び降りる。


「ティスカ!奴さんがお目覚めだよ!!」


身軽に気で出来た椅子からテーブルに飛び乗り奥に向かって誰かを呼んでいた。