私はあの後、お粥を食べ終わって、おわんを料理場に持っていこうとした。
「わっ!麗華ちゃんいいよ!僕タチが持っていくから。」
「ううン、私が持っていきたいノ」
そういって、おわんを持ち、船をさまよう。
カチャッ、カチャッと、水の音と食器のぶつかり合う音が聞こえ、影からコッソリ覗きこんだ。
あ、
カルチェさんだ、
少し恐怖に恐れる麗華。
「…なんですか?」
ビクッ!!!
気づかれたのか、手を動かしながら、顔もむけづにそういわれた。
超能力者と、一度疑ってしまう。
「…あノ、食器……」
「ソコにおいていてください。そしてすぐさま、立ち去ってください。
僕はアナタが嫌いなんです、」
「それハ、ルイカンドさんの…」
スパーン!
と、顔の横スレスレにフォークが刺さる。
ビクッと体を震わせる。
「気安くあの人の名前を呼ばないでくださいッ!!!
なんなんですかっ、昨日会ったばかりのあなたに、
何がわかるんですかッ、」
「…すみ、ませ、ン。
食器、ココに置いておきまス。ご飯。ありがとうございましタ。
おいしかったでス、料理、お上手なんですネ。」
『うまかった、料理、上手なんだな…』
「なん、で…」
そう、カルチェには、初めて自分の料理を食べてもらい、ほめてもらったあの日のルイカンドと麗華が重なってしまったのだ。
「それでハ、失礼しまス」
そのまま食器をすぐそばの棚の上において、走ってその場を去った麗華。
まだまだ自分の分からないことだらけで、
小さな、怖さ、不安に満ちてしまったのだ。
この時期。
子供のような無邪気もあれば、大人のような冷静さもある。
それでもまだまだ大人の世界を知らない、今から知る段階で、この広い海での世界に自分はついていけるのか、不安に満ちてしまったのだ。
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