でも、じいちゃんがぼそぼそ語る歴史は小難しい歴史ではなかった。


「美幸、わしが呼ばれたのはな、菊水作戦っていってな、忠臣て言われとった楠正成公の旗印の名前が作戦についとってな、沖縄でアメリカを食い止めろって言われた」


あたしは沖縄の空を思い浮かべていた。真っ青で澄み切った青、透き通るような。


沖縄戦は映画やドラマで見た。

ひめゆりの塔やサトウキビ畑の歌、たくさんの人が犠牲になっていた。


お盆の時期にはそんな映画やドラマは必ず放映される。

辛気臭くていやだな、と思いながらも「課題ドラマ」として感想文の提出が宿題になってたから、なんとなく見てた。


大人になってから、明生と夏休みに訪れた沖縄は国内屈指のリゾートでそんな歴史は探さなければ見当たらなかった。


そして、あたしも探そうとはしなかった。


じいちゃんは当時、沖縄に行ってたんだ。


「おうかって知らんじゃろ?」


「おうか?」