「言っとかんといけんな」


しゃりと小気味いい音がする。

じいちゃんは入れ歯のはずだけど臆することなくスイカにむしゃぶりついていた。



「美幸。お前はわしの孫じゃなか」



種をぺっと吐き出して続けた。

「豊も、お前の父さんももわしの種じゃなかよ。ばあちゃんもわしの女房じゃなかと」


あたしはスイカをすくう手を止めた。

初秋だというのに庭の向こうからみんみんとセミの声が聞こえてくる。



「美幸、お前の本当のじいちゃんは特攻で死んだ」



声のほうをみるとジジっと声がして庭の向こうの桜の木から一匹アブラゼミが飛び立っていった。