テレビ画面は吸い寄せられるように突っ込む2機目の飛行機の映像を送り出していた。

「父ちゃん!」

ばあちゃんがブラウン管を抱きしめる。

スピーカーから響く轟音と、人々の悲鳴がばあちゃんの悲鳴と重なり合い、あたしは一瞬何が起こったのかわからない。


「父ちゃん」


崩れるようにテレビの前に座りこんでばあちゃんは子どものようにおいおいと泣きじゃくりだした。

じいちゃんはあわててリモコンでテレビを消そうとした。

センサー部分がばあちゃんの体にさえぎられて、スイッチが切れない。


テレビ映像は崩壊する貿易センタービルの映像に切り替わっていた。

上から崩れ落ちる。

低い爆音はまるで振動や、粉塵の匂いさえも伝えてきそうだ。



「みわ・・・。みわ・・・・」


ばあちゃんはほうけるようにぺたりと座り込んでいた。

座った尻の下に水たまりができて、畳に吸い込まれていく。


じいちゃんはあわてた様子でテレビの本体でスイッチを消すとばあちゃんの小さい肩を抱いて立たせた。


「大丈夫じゃけん。あるけっと?」


ばあちゃんはじいちゃんを見つめた。

でも、ばあちゃんの瞳はじいちゃんを見ていない。



蒼白な顔でじいちゃんに言った。




はっきりと。