「ち、ちょっと!
 放してくださいっ!」

あたしは、菊池先輩に襟首を
つかまれたまま、ピアノのある
個室へ連れてこられた。


 「放してくださいってば!」

と、あたしがもがいた途端

ドサッ

と、床に落とされた。
痛ぁー…

 「放した」

ひざをさするあたしに、平然
と告げる菊池先輩。


Sだ…

 「いつまで床に座ってる
 つもりだ。
 早くピアノに座れ」


………ドSだった…。

あたしはしぶしぶピアノへ
座る。

先輩は、あたしのことを
じっと見ているだけだった。


 「あの…」

 「なんだ?」

バイオリンのケースを取り
出しながら尋ねる先輩。

 「なんで、あたしみたいな
 凡人と菊池先輩がパートナー
 なんですか?」

 「……それには、答えないと
 いけないのか?」


………は?