「なんだ、恋人の1人もいないのか」
「興味が無くて」

 ベリルは苦笑いを返す。

「君らしいよ」

 青年はグラスをテーブルに乗せ静かに立ち上がった。

「! 行くのか」
「ええ。会えてよかった」

 言って上着のポケットから小さな箱を取り出した。

「奥様に」
「! ありがとう」

「ネックレスです」

 箱の名前を見る。

「これ、かなり高級なやつなんじゃ……」

「独り身だとお金の使いどころが無いんですよ。こういう時にドカッと使わせてもらいました」

 笑って言ったベリルにマークは照れながらポケットにしまいこんだ。