さらに1年が経ち──15歳になった彼は落ち着き払った仙人のような貫禄を見せる。

「ベリル!」

 向こうから歩いてくるベリルにマークは笑って手を振った。ベリルもそれに手を挙げて応える。

「元気だったかい?」
「マークも」

 見上げる少年にマークはニコリと微笑んだ。彼はブルーと会い話し合っていた。

「彼の真実を知る我々だけは彼の友でいよう」と……

 ベリルは誰も憎んでいない。僕なら生み出した科学者たちを憎んでいたかもしれない。

 だが、彼は逆だった。

「憎む? 何故」

「何故って……生まれなかったらこんな処に閉じこめられなくても済んだのに」

「それは違う。彼らがいなければ私はここには存在していなかった。あなたとも出会わずにいた。この記憶も無い」

 君は強いね。僕は君を生み出した科学者たちに少し憎しみを抱いていたのに、君はそれをあっさりと消し去った。

「ただ……」

 ベリルは少し視線を落として薄く笑い付け加える。

「私の持っている知識は意味がない。という事は少々悲しい」

「!」

 どれだけ学ぼうともそれを活かせる場所は無い。だが彼は学ばなければならない。それが彼に与えられた『仕事』なのだ。

「学ぶ事自体はとても楽しいけれど。時折、虚しくなる事もあります」