ベリルが14歳になった頃──マークと彼はすでにうち解け合った仲となっていた。

 視察としては逸脱した事だが、彼は『中』と『外』を上手く使い分けた。

「教授」
「なんだね?」

 コーヒーを傾けるベルハース教授にマークは静かに問いかける。

「どうして僕に彼の名を……?」

 今まで質問するチャンスが無かったがようやく聞く事が出来た。

「……」

 しばらく沈黙していた教授が低く発する。

「『賭け』だよ」
「賭け?」

 ベルハースは監視カメラを一瞥したあと小さく溜息を吐き出した。

「あの子は死ぬまでここを出られない」
「!」

「我々は彼が生まれた瞬間、歓喜した。そしてその後の事を考えた」

「教授……」

「人間で言えば感受性の強くなる年頃だ。友達もいないのでは……相手は誰でもいい訳ではない」

 そう言って教授はコーヒーを一口味わいマークを見据える。

「我々は君に賭けたんだ」
「ありがとうございます」

 マークは目を細めた。