「マークの奥様はとても綺麗な方ですね」

 一緒に食事をするマークに嬉しそうにベリルは話しかけた。

「僕の一目惚れさ」
「だと思った」

 いつもは食事のマナーを教える教師と2人で食事をするベリル。確かにマナーは完璧だ。12歳とは思えない上品さがある。

「……」

 ふいに少年は食事の手を止めた。

「! もういいのかい?」

 ベリルは目を伏せて頭を横に振った。そして愁いを帯びた瞳で静かに発する。

「思い出……というものは良いですね」

「え?」

「それが良くも悪くも記憶に残る。私にももちろんあります」

「ベリル……」

「今までの『記録』を見せて欲しい。と言えば見せてはくれます。しかしそれは思い出とは言い難い」

「……」

 マークは何も言えなかった。

「思い出はいつも同じ背景です」

 そうしてベリルは困ったような笑顔を見せる。

 それは……自分の運命を受け入れた笑みだ……