「!」

 入ってきた人物に教師である女性が怪訝な表情を浮かべる。

「年に一度の視察ですよ」

 ベリルは少しの笑顔で応えた。

「! へえ。じゃあ、また明日ね」

 楽譜を持って女性が立ち上がる。マークの横を通り過ぎた時、小さく会釈した。

 女性の後ろ姿をしばらく見送り、楽譜を片付けているベリルに視線を移す。

「……」

 そわそわしながらベリルに近づいた。

 10歳の少年に近づく態度ではない。外なら通報されている処だ。

「こんにちは」

 マークが話しかける前にベリルが口を開いた。

 先に声をかけられ青年は一瞬、肩をビクリと強ばらせる。