「…泣かないって、決めたんだ」
静かなリビングに、震えたような自分の声が響いた。
櫂兄は頷きながら聞いてくれた。
「……泣いたって、なにも解決しないから、」
──・・・『お母さんとお父さんね、離婚するの』
『イヤだ』
『涙、お母さんとお父さん、どっちが好き?』
『どっちも』
『どっちか、決めて?』
『イヤだ、三人一緒がいいっ!!』
『……涙、わかってね』
ほら、“わかってね”で、簡単に離婚は決まってしまう。
「だから、泣かないって、……決めた」
「…涙?」
──・・・なんか、目が滲んだ。
「……決めた…、から」
泣いたら、恥ずかしい。
感情を出すなんて、
ダサい、カッコ悪い。
ツーッと頬を伝う一滴の雫は
涙以外、他のものでもなかった。


