叶うはず、ないんだけど。 できるはず、ないんだけど。 「また明日、来るから」 櫂兄が帰ろうと席を立ったとき、 ──・・・行かないで。 そんな衝動に駆られた。 「……涙?どした?」 櫂兄の着ているパーカーの裾を、 無意識にギュッと掴んでた。 「………ヤダ」 ──・・・行っちゃ、ヤダ。 あと少し、もう少し。 「…………」 なにも言わずに、頭を優しく撫でてくれる櫂兄。 それだけで、満足なんだ。