密着した体に、櫂兄の熱が伝わってくるのがわかった。
その肩は確かに震えていて。
「…生まれてこなきゃよかったなんて、言うな」
「…………っ」
幼い子をあやすように優しく、だけど腕の力は強く。
「……生まれてこなきゃよかった人間なんて、いないんだから」
──・・・ごめん櫂兄。
心の中で何度もそう言った。
「……涙は生きなきゃいけない」
逃げたかった。
目を逸らしたかった。
信じたくなかった。
「……生きるんだよ」
櫂兄の言葉が、胸に響く。
奥に響いて、
刺さるほど痛くて、
まるで串刺しにされているようにズキズキして。
「…生きなきゃ、怒るよ?」
──・・・イヤだ。
痛いのも、
辛いのも。
櫂兄が怒るのも。
だから今だけ。
「………櫂兄ぃ…」
ゆっくり、櫂兄の背中に腕を回した。
今だけ、
少しだけで、いいから。
甘えてもいい?


