櫂兄は何もないところで育ったのか? 「…なんか懐かしいなー」 櫂兄は思い切り伸びをして、深呼吸。 そして何故か、悲しそうな顔をする。 「櫂兄、ずっとこの町?」 「……ううん、本当の俺の地元はまだましなとこ。ここはばあちゃんの町」 ──・・・ばあちゃん? 櫂兄の? 「櫂兄の…、おばあちゃん?」 「一時期さ、ばあちゃんの家で暮らしたことがあって」 そう言った櫂兄は、天を仰いで 「まっ…、病気で死んじゃったけどな」 と、小さく言った。