純白エゴイスト


「……でも、今年から、ぼくだって高校生なんだ。いくら父さんがオシャレ事情に疎い会社員46才だからといって、もう少しぼくのファッションにトレンドを含ませてくれてもいいと思うんだよ!」

「トレンド? なんだそれ、おいしいのか」

「本気で言っているの!? いったい父さんは『め〇ましテレビ』のファッションチェックを何だと思っているのさ!?」

「そんなものは観ない」

「観てるわ! だいたいこの狭いアパートに、テレビは一台しか無いわ!」
そして六畳一間ゆえに、テレビは作為的でなくとも目に入るのだ。

ぼくは姿勢を正し、仕事から帰宅したばかりの父から給金っを預かりつつ、
「頼むよぉー、今月の家計を計算したんだ。この家ではクリスマスのパーティも忘年会も新年会もおせち料理も、四季に沿った催し物をしないから、ダウンを買ってもまだ贅沢が許される程度にはお金が余るんだよぉー」

「具体的に、いくらくらい?」
父が質問してくる。しかしどの値段を示しているのかが不明瞭だ。

「ダウンジャケットが、5000円ほどかなあ」

ぼくの提言に、父は耳を傾けた後、

「それじゃあ、去年まで着ていたアレは、どうするんだ」

「うん。とりあえず父さんが着るべきだと思うんだ」
それが嫌ならフリーマーケットに出せ。

「……何を言う。会社にあんな趣味の悪いジャケットを羽織って出勤できるか」

……。
……耐えろ、耐えろぼくの右手。