さて。
かつて校内一、とうたわれた超絶的な美少女である黒木柿木について、どこから語ろうかなあ。まずは、その変わった名前から、だろうか。
くろき、かきのき。
変わっているでしょう?
しかし、本人を前に言及するのは、よしておこうと断言する。

なぜなら彼女の人間性が、まるで見た目とは反比例したような性悪で、いや、性悪というかなんというか、一般論で比喩したところの「正確が悪い」状態にあるからで、
実直無欲超絶真面目の委員長キャラクターを甘受しているぼくと、おおよそ接点というものがまったくもって皆無である現実も、その点に端を発しているのだ。

なかでも黒木のエゴイストぶりは尋常じゃなく、
「……黒木さん、いや、黒木! 俺はお前のことが、本当に、心の底から、俺という人間の根幹から大好きだぁー! 気の強いところ、なりふりかまわないところ、他人に気をとられないその『大いなる何か的な性格』、何から何まで、俺は、お前のことが好きだあぁ――――っ!」
なんて、……そうだなあ、おそらく高校生活全てをベットした親友の賭けに対し、

「や、無理」

の一言、レイズにより切り捨てた強者。
いや、まあ。
確かに、告白の方法に無数の改善点が見受けられるけれど。おそらく相手にしてみれば、悪口と取られないようなこともないような気がしないでもないし。

そして彼女……黒木柿木は、今日も、明日も、明後日も。
彼女なりのエゴイスト街道を、ひたすらに、突っ走っていた。