「唯、何かあったら必ず連絡するんだよ?いいね?」

キアリーが唯の頭を撫でながら言う。少し照れ臭そうに、唯は笑った。

「ありがとう、ほんとに、ありがとう」

うっすらと涙が浮かぶ。
と、その時だった。


パチン!


何かが当たる音がした。レオンが額に手を当て、うずくまっている。

「ど、どうしたの?」

聞かれてレオンはおでこをさすりながら、先が吸盤状になっている矢を見せた。

「…これが額に」

思わず笑う唯。レオンは少し顔を赤らめながら、ムスッとした表情を浮かべていた。

「何かついてるな」

キアリーが、矢についていた紙を取り外して中を見てみる。

「なにっ!?」

いきなり叫ぶと、キアリーは辺りをキョロキョロとみまわした。
何事かと、唯とレオンが手紙の中を覗いてみた。


【月明かりが消え、全てに等しく闇が訪れるとき。呪われしダイヤの輝きを頂戴する】

紙には紅色で描かれた6本足の蜘蛛のマークがあった。

「これって…」

その時、ズボンのポケットがブルブルと震えた。


携帯こっちに入れてたっけ?


取り出すと、陽輔がいなくなったのと同時に消えていた、あの携帯が入っていた。

見ると1通のメールが届いていた。


『どんなことをしても、けして償いきれるものではないけれど、またいつか、君と笑って会える日を楽しみにしている。唯との約束は、必ず守る』


「陽輔…」


ちょうどその時、搭乗開始のアナウンスが聞こえてきた。

「あ、もういかねーと」

残念そうな顔のレオン。唯は苦笑しながら頭を撫でた。

「またね」


これが最後じゃない。だから、別れの言葉はこれ。


「あぁ、またな」


レオンは軽く唯を抱き締めると、優しくおでこにキスをした。

「また連絡する!必ず!」

手をふりながら、キアリーと共に搭乗ゲートへと向かっていった。

2人の背中が見えなくなるまで、唯はじっと見つめていた。