Symphony V

走り出してすぐに、バスンッと後ろで音がした。


何の音?


また、バスンッバスンッと近くで音がする。その音に気をとられて、後ろを振り向こうとし、少しペースが遅くなる。

「振り向かずに走れ!」

レオンの言葉に、唯はまた必死で走り始めた。

「こっちだ!」

あと少しで出口というところで、レオンが急に唯の手をひいて、方向を変えた。

「えっ!?そっちは出口じゃないよ!?」

突然の行動に戸惑い、何度も足がもつれそうになる。

レオンに手を引かれてやって来た場所は遊園地の目玉でもあった、巨大迷路の入り口だった。

「急いで入るんだ!」

レオンに言われて、入り口の階段を駆け上がった。

迷路を一望できる、ちょっとしたスペースに到着する。
唯は肩で息をしながら、レオンに聞いた。

「ね、ねえ…こんなところにきてどうするの?」

唯が聞くと、レオンはざっと迷路を見渡して、3箇所あるうちの真ん中の入り口から、唯の手を引き進み始めた。

「えぇ!?中に入る」

「しっ」

レオンに言われて思わず唯は言葉を止めた。

(後で説明する。とにかく、急いで進むぞ)


唯は困惑した表情を浮かべながら、黙ってレオンについて歩いた。