Symphony V

想像している以上に警察関係者の人数は多かったようで、みんな忙しそうにあちこち動き回っていた。


今なら出られる。


そのまま靴を履き、玄関を出た。警察の制服にスニーカーはかなり不釣合いな感じで、違和感があったが、外は夜。家を出てみると、違和感はすぐになくなった。

家の周りにはシートがされているので、どうやって出て行ったものかと考えていると、ちょうど、シートが家に隣接して立ててある古い納屋部分にもかけられていることに気づいた。


あ!あれなら出られるかも!


唯は少し足早に、納屋の方へと向かう。幸い、入り口はシートのこちら側にあったので、納屋の中に入ることができた。


えっと…確か……


納屋の2階に上がる。埃っぽい空気を、できるだけ吸わないように気をつけながら、幼い頃の記憶を頼りに窓を探した。


あ!あれだ!


薄明かりの差し込む小さな窓を発見した。大きさは大人が一人、かろうじて通れる位の大きさだ。窓を音を立てないよう、ゆっくりと開ける。下を見回してみるが、ちょうど、家の庭とは反対側に出られるようになっているので、人影はなかった。唯はそのまま窓を出る。足を踏み外さないよう、下にある小さな屋根の上にゆっくりと降りた。


出られた!


何とか下まで降りた唯は、できるだけ人に見つからないようにと、細い、少し道からは外れたルートを通って、指定場所まで走っていった。