学園(吟)

「にゃあ」

俺の頬を舐める黒猫。

「ロベリア」

学校から家まで付いてきてきたのか。

震える手で頭を撫でる。

その隣には、身を屈めて俺を見つめる吟ネエ。

「吟ネエは、相変わらず、すげえよなあ」

あの二発を食らっても、立っていられるのだから、俺よりもタフと思っていい。

「お前は、エムアルなあ」

「吟ネエのためなら、ね」

俺は何とか背を起こし、辺りを見回す。

渚さんは吟ネエに任せて、家に戻ったようだ。

「吟ネエ、耕一さんの言ってる事は、正しいと思う」

「うむ」

「でも、吟ネエの良い所と悪いと所を両方含めてる。誰しも、いい部分だけで出来てるわけじゃない。耕一さんの言葉は頭の片隅にでも置いとくくらいで、今のままでもいいと思う」

「生意気な奴アル」

「だって、今のままの吟ネエが好きなんだ」

笑顔を作りたかったが、顔が痛くて変えられなかった。

しかし、吟ネエには伝わっていたようで、微笑を浮かべる。

「お前は、やっぱり変わってるアル」

「吟ネエの傍にいられないのなら、普通なんていらないんだよ」

結構な口説き文句となっているが、本心だ。

座っていると、ロベリアが俺の膝の上に座り込んだ。

「おいおい、これじゃ家に帰れない」

「アチシの下僕を横取りしようとしているアル」

「そんな馬鹿な」

俺を見つめて鳴いているところ、吟ネエの言っている事も満更ではないかもしれない。

しかし、逆に考えて、吟ネエを取るなといっているようにも思えてくる。