学園(吟)

踏ん張ったところで、耕一さんの拳が腹に決まる。

「ぐ」

吟ネエの重さとは桁が違う。

吟ネエが鉄だとすれば、耕一さんは超合金だ。

「おええ」

塀の溝に昼食にとった中華を吐き散らす。

内臓の中に熱湯を入れられたような痛みが、続く。

一撃で限界が近いほどの威力。

だが、まだ、ギリギリ耐えられる。

「はあ、はあ、はあ」

「まだ、受けるか?」

耕一さんは何ら変わることはなく、無表情だ。

「当たり前」

さっきの一撃で恐怖は増大する。

次に食らえば、気を失うかもしれない。

だけど、後ろにいる大切な物に傷をつけないのならば、やらなくちゃならない。

「膝が笑っているぞ」

「これは、ちょっとした足の運動」

立っているのも、やっとだ。

吟ネエはニ撃を食らってもやろうとしているのだから、相当にタフだといえる。

「そうか」

耕一さんは再び構える。

そして、一撃を放ち、頬に拳がめり込む。

威力が強すぎたのか、奥歯が折れる。

俺は吟ネエと同じくして、地面をロードローラーのように転がっていった。

回転が止まった時には、完全に意識が朦朧として、幽体離脱でもするのではないかという気分に襲われる。

「吟、これが、お前の行動の結果だ」

耕一さんは静かに、家へと入っていく。