学園(吟)

吟ネエは引きずられるように、地面を転がっていく。

俺は酒の入った袋を渚さんに渡し、吟ネエの元に走る。

「吟ネエ!」

しかし、気を失ってはおらず、立ち上がろうとする。

「もう、止めてくれ!」

「アチシにとって、これだけ面白い事はないアル」

「好きな女の子が殴られ続けて、黙って見てられるわけないだろ!」

俺は振り返り、耕一さんを見る。

耕一さんの様子は変わらず、立っているだけだ。

「耕一さん、もう、灸は据えたでしょ?吟ネエだって女の子なんだ、あまり無茶するのは止めてくれよ」

「まだだ」

「まだって、何考えてるんだよ!耕一さん!」

「吟の意志を挫く。それをしない限りは終わらない」

後ろの吟は今にも構えて、戦いを再開しそうだ。

「なら、俺を殴れ!」

「ほう」

耕一さんは笑みを浮かべる。

「吟ネエが殴られるのは嫌だ。絶対に!何がなんでも!」

「アチシの、楽しみを取るアルか?」

「後で俺をどうとでもしていい。だけど、今だけは、吟ネエの前に立つ」

吟ネエは無言になり、構えを解いた。

「いいだろう」

耕一さんが静かに、距離を縮めてくる。

熊でも相手にしているのかと思える程のプレッシャーがかかる。

全てが大きい。

何をしてこれば、人の前に建つだけで屈服させるほどの威圧を放つ事が出来るのか。

俺は頬を叩き、全身に力を入れる。

「来い!」