学園(吟)

「あ。あかんで。この前やって見つかりそうになったんよ」

頑なに拒否の色を示す。

「じゃあ、いいアル。壷は骨董屋に売るアル」

「ちょい待ってや!その壷売ったら、ウチの貯金で買われへん値段になるやんか」

梓さんは自分の中で葛藤しているようだ。

「梓は壷のフェティシストを目指しているものかと思ったアルが、嘘だったアルか」

「ウチはそこまで重度ちゃう!」

梓さんは鑑賞する事で癒されているだけであって、壷で性欲を満たしているとはいえないだろう。

それはさておき、このままでは酒を買えない状態に陥るだろう。

「う、うーん、」

「格安にするアル」

「ほ、ほんまか?」

吟ネエが指で隠しながらも金額を伝える。

「今回だけやからな?ほんまは未成年に酒売られへんねん、解ってや」

誘惑に負けてしまったようだ。

しかし、梓さんが壷好きだという事をよく知っていたな。

酒屋で知り合いだから、好きな物とか弱みは確実にリサーチしているのだろう。

「でも、値段はそのままやからな」

『梵天』が続いてくれるなら、ちゃんとお金を出すだろう。

吟ネエが酒のために金をケチったりしているところが想像しにくい。

俺に金を払わせた一件もあったが、アレは自分で払うって言ったわけだしな。

吟ネエはどれを買うか迷っているようだ。

さすがに、全てを買い占める程のお金はないみたいである。

吟ネエの手助けをしてやりたいのだが、お金を持ち合わせていない。

「これとこれにするアル」

『海』と『砕』だ。

お酒のタイトルがおかしな事になっているが、吟ネエからすれば飲めれば問題はないのだろう。