学園(吟)

吟ネエの情報によれば、家の酒は飲み干したらしい。

だから、帰りに『梵天』に寄る事となった。

しかし、売ってくれるのか心配だ。

店の中に入ると、今はお客さんの姿が見当たらない。

「はあ」

レジ付近でため息を吐いている梓さんの姿がある。

「梓さん、売れ行きはどうですか?」

「君なあ、この状況見て、よくそんな台詞を吐けるなあ」

コアな人気はあるとはいえ、経営のほうは苦しいのかもしれない。

「何か、新しい商売方法考えなあかんのかなあ?」

看板娘は店を支えるために必死だ。

可愛い看板娘だけで足りない部分は、確かにあるかもしれない。

「萌えという単語は飽きられてますからね」

「そやねん。コスプレで萌えとか散々やりつくされたから困ってるんや」

「店内を改装して洋風にするとか、お酒を10本買ってくれた人とデートするとか」

「店内改装する余裕ないしする気もないわ。それと、ウチはそないに安くない」

硬い拳骨を頭に一発入れられる。

「いてて、本気で殴らなくてもいいじゃないか」

「こっちは本気で考えてるんやから殴られて当たり前や。それより、吟ちゃんと何しにきたんや?」

「酒屋に来るといえば、一つしかない」

「前に一回売ったったやろ?」

「それがさ、どうしても欲しいって言うんだもの」

「何や、ええように使われてるな」

「まあ、好きでやってるんだけどね」

吟ネエはどの酒を飲もうか選んでいるようだ。

「約束は約束や。今回は吟ちゃんが暴走しようともウチは知らん」

「はあ」

「梓、お前の好きな壷を最近手に入れたアル」

「ほ、ほんまか!?」

あれ、そんな物、吟ネエの部屋にあったっけ?