学園(吟)

「ヒューヒュー、熱いですう」

隣では仕事をサボっているカスがいる。

もはや、金髪店員という名称は高価すぎるかもしれない。

金髪店員の顔や腕のところどころには、傷跡が存在していた。

裏で茶髪店員に奥義を受けたのにも関わらず、まだ懲りないというのか。

ある意味、すごい根性だとも言える。

しかして、俺はツッコまない。

すでに金髪店員の後ろにはツッコミ要員が存在しているからだ。

「涙」

殺意の赤黒いオーラがくっきり見えるとなると、金髪店員の命はそう長くはない。

「これはお仕事ですよう。恋のキューピットなんですう」

「それでお金が発生するなら、物凄い楽しい仕事なんさねー」

「先輩、人と人とを繋げるお仕事って、大切だと思いませんですかあ?」

「大切だわねえ」

茶髪店員が右手の握力で金髪店員の頭蓋骨にダメージを与えている。

「でも、残念さねえ。ここは料理を提供する店であって、恋のキューピットがいるような場所ではないんさ」

「ぎゃあ、せ、先輩、頭が割れちゃいますう」

「すっからかんの頭を割っても、誰も困りはしないんさ」

そのまま、再び厨房の奥へと引きずられていった。

「全く、なんであんなにやられてるのに懲りないんだ」

茶髪店員の言うとおり、頭蓋骨の中には何も入っていないのだろう。

「すまねえ。途中だったなって、何をしてるんだよ」

吟ネエが俺の人差し指を舐めている。

「見て解らないアルか?」

「何をしているかというのは解るんだよ。それに、どういった意味があるんだ?」

「これの意味が解らないというのは、まだまだアルな」

解る奴がいるのなら、ここに連れてきて欲しいものだ。

しかし、吟ネエの口の中の舌の動きが妙に艶かしい。

指を舐めるという行為に、これほどまでの効果があったなんて。

股間に集中砲火の後には見える部位で精神ダメージを与えてくるとは、末恐ろしい。

「ぎ、吟ネエ、周りの視線がさらに厳しくなっているから、一旦、止めよう」