学園(吟)

「最初から3皿頼んどけば良かったじゃないか」

「チッチッチ、三皿だと残す可能性があるアル」

しかし、半分だと俺の腹が満たされない。

もしかすると、餃子も一皿半じゃなければいけないとか言い始めるんじゃないだろうか。

「安心するアル。餃子は全部ゆずってやるアル」

「俺の心を読むなよ」

「しかし、まだまだ子供アルな。レディーファーストという言葉を知らないアルか?」

確かに。

吟ネエの金なんだから、一皿半食おうが自由だ。

ただ、少し悲しい部分はあるけどな。

「すまん。俺、吟ネエのお金だっていう事をすっかり忘れてた」

不毛な事を言い続けるのはいかんともしがたい。

「気持ち悪いくらいな素直さアルな。感心感心アル」

「ここには飯を食うためで、吟ネエと争うためにきたんじゃないからな」

「お待たせしました」

茶髪店員が新しい餃子を持ってくる。

「本日は誠に申し訳ございません。以後、このような事がないようにします」

「怒ってるわけじゃないし面白い奴だからいいんですけど、接客してる事が不思議なんですよね」

「涙、いえ、彼女に厨房を任せると、恐ろしい事態になりますので」

そんな事を言ってもいいのかと思うのだが、茶髪店員の言葉が痛いほどに解るのは何故だろう。

「この店、本当によく運営出来てますね」

「店長が良い人なんで、彼女を解雇させる気はないと思うんですよね」

本当、大変だな。

「あ、余計な事をベラベラとすいません。それでは、ごゆっくり」

茶髪店員は肩を落とし気味で他のテーブルに向っていった。

今も金髪店員は迷惑をかけてる事に違いない。

いや、もう考えるのはよそう。

今は吟ネエとの時間をエンジョイするんだ。