学園(吟)

「二人で」

見て解らないのかと思いたくもなるけど、素直に答える。

「高校生カップルですかあ。でも、あなたはとても良い人止まりな感じがしますう」

客を馬鹿にした台詞をいとも簡単にはき捨てるとは、傍若無人っぷりが売りの店なのだろうか。

中華ユニフォームがとても似合うのだが、社会常識のなさでぶち壊した。

「あいた!」

後ろに立っていた、金髪店員よりも少し背の高い茶髪の店員さんに拳骨を入れられている。

「目を離したら、馬鹿な事を言ってんじゃないさ」

その後、金髪店員の頭に手を置くと、力を入れて腰が真っ二つに折れるんじゃないかと思うくらいに下げた。

「ホント、申し訳ありません。ちゃんと教育しておきますから」

「随分、苦労してますね」

「お客様にかけた迷惑に比べれば、私どもの苦労なんて些細なものです」

「せんぱーい、腰が痛いですよう」

「涙も謝るんだよ!」

「ええ、だって、本当の事を、ごほ」

横からのボディーブローを入れられて、痛みで黙ってしまったようだ。

「あ、お一人様ですね、お席に案内します」

営業スマイルで対応しているのだが、今、一人と言わなかったか?

確か、吟ネエもいたはずだが、周りを見ると姿が無い。

店内を見回すと、空いた席に座っているではないか。

なるほど。

目には目を社会常識のなさには社会常識のなさで対抗したわけか。

全く持って、よろしくない話だ。

「こっちこそすいません。連れが勝手に席に着いちゃったみたいで」

「そうなんですか」

「すいません」

「はは、お互い様ですよ。では、そちらまでご案内します」

金髪店員は壁にもたれさせた後、茶髪店員さんと吟ネエの席まで向うと、メニューを渡される。