学園(吟)

この場合、どうしようもない。

負けは負けなのだから、男子生徒に打つ手がない。

「まあ、俺が言うのも何だが、他の子を見つけたほうがいい」

「うるせえよ、お前に俺の気持ちが解るか!?」

「解らんが、切れてる時点でお前は吟ネエに向いちゃいないよ」

「はあ?」

「お前が吟ネエを大切だというのは解ったよ。でも、お前は吟ネエを知らなさ過ぎる」

「これから知っていけばいいだろ!何でお前に諭されなきゃならねえんだよ!」

「俺はお前のために言ってるんだ」

「自分が付き合いたいからって、適当言おうとしてんじゃねえよ」

睨みを聞かせているが、怖いとは思わない。

「否定はしないよ。俺は吟ネエの事が好きだからな」

「ほら見たことか!何が俺のためだ!さっさと、離れろよ!」

もう一度俺に殴りかかってこようとしたが、吟ネエが片腕で襟首を持って男子生徒の肉体を持ち上げた。

「ぎ、吟先輩?」

「アチシとのセックスは楽しかったアルか?」

「え?え?」

いきなりのことで、反応が挙動不審になっている。

「残念アルが、お前じゃ役不足アル」

吟先輩は雨の降りしきる屋上へと男子生徒を投げ捨てた。

男子生徒は自分の身に起きた事が信じられなかったのだろうか、呆けているようだ。

吟ネエは一人で階段の下へと降りていった。

周りには野次馬が集まっており、吟ネエが通ろうとすると道を開けた。

男子生徒の事は気になったが、俺が下手に声をかければさらに傷がつくだろう。

それに、俺は自分を殴りかかってきた野郎を介抱するほど優しくはない。

ちなみに、情けは人のために為らずという諺があるのだが、この場合に使ってしまうと間違えだ。

俺は男子生徒に情けをかけようとはしてないし、自分のためになるだろうとも思ってない。

言っておくが、放置プレイだ。

男子生徒と友情が生まれたらいいなとかこれっぽっちも思っちゃいない。

出来れば、これっきりで登場しなくなったらいいなと思うくらいである。