学園(吟)

「おわ!」

ゾクっと、背筋に電撃が走る。

それが快感なのかどうなのかは定かではない。

「小僧にはアチシとのフィット感がないアル」

「えっと、それは、付き合う気はないって事?」

「残念賞アルな」

視界の色が戻り始めている。

一瞬の出来事だったのにも関わらず、地獄と天国を行き来したような気がする。

男子生徒が、勘違いをしていたということになるのか?

それとも、吟ネエがわざと『酒』の部分を抜いたのかもしれない。

多分、抜いた方が面白いからだろうか。

その説になると吟ネエがかなりの性悪で、男子生徒が少し可哀想になるのだがな。

何にせよ、気持ち的には数倍楽になった。

「ふう、良かった」

安堵感から全身の力が抜け切ってしまった。

「ほれ、祝杯を挙げるアル」

「何の祝いだよ?」

「お前が、アチシに大声でラブコールをした祝いアル」

そういえば、さっき大声で吟ネエに突撃したんだった。

何も考えずに気持ちをぶつけていたんだが、相当恥ずかしいぞ。

気になるだとか、中途半端に好きだとか言ってきたけど、今のは決定的ではないのだろうか??

きっかけになったから良かったとでも言えばいいのか?

祝いと言っている吟ネエは、本心から喜んでいるのだろうか。

気付けば、吟ネエが酒を口に含んでいる。

「本当に酒が好きだなあ」

呑気な台詞を吐いていると後頭部の髪を掴まれ、顔を強制的に近づけて口移しで酒を飲ませてきた。

吟ネエから口移しされても酒は甘くならず、慣れていない俺にとってはきつい味がする。

「がああ!」

俺の悶え苦しむ姿を見て、吟ネエは一升瓶片手に少しだけ微笑んでいた。