学園(吟)

自分の立っている場所よりも、上からだ。

出てきた入り口を囲う屋上にある唯一の突起。

真横には梯子がついていて、登れるようになっている。

落ちないように、しっかりと梯子を掴んで希望を抱きながら登る。

少しずつ見えてくる全貌。

「風邪、引くぜ」

ロベリアがいて、吟ネエが寝そべっている。

吟ネエは目を閉じているところ、眠っているのかもしれない。

まるで、プールを泳いだ後に疲れた人みたいだ。

ロベリアは、俺が屋上に入った事がわかっていて鳴いたというのか?

今は鳴く事を止めて、吟ネエの隣で体をくっつけて横になっていた。

種別は違うけど、仲のいい姉妹のように見える。

登りきって、俺は吟ネエの隣に座る。

空は、雲が覆い始める。

まるで、不味い答えが返ってくるかのような感じだ。

「吟ネエ、本当に付き合っちまうのかよ?」

抑え切れない衝動が、胸の内からダムを決壊させるように現れる。

「嫌だよ。吟ネエが、特定の誰かの元に消えちまうなんて、嫌だ」

吟ネエにとって、セックスは挨拶のようなものだと割り切っていた。

だが、付き合うとなれば、何かが違うような気がする。

どこかに遠のいて、姿が見えなくなるような恐怖。

寂しさは増大し、夏に近いのに寒さすら感じる。

今も、色が見えない。

喉の潤いはなく、渇きと痛みが走り続けていた。

独りよがりな貪りは虚しいものだと俺自身が言った。

俺は、余裕を見せていたんだ。

どこかに、吟ネエは傍にいてくれるという自負があったのかもしれない。

だが、違う。

吟ネエが手の届かない遠くに行ってしまうんだ。

永遠に寂しさを味わい続けなければならないんだ。