学園(吟)

吟ネエの居る場所はどこだろうか。

「吟先輩、どこにいるんっすかね?」

「お前、付き合ってるんだろ?なら、知っててもいいと思うんだがな」

「付き合い初めで、全部知ってるわけないっすよ」

そういえば、吟ネエは携帯電話を所持していない。

電話や文字に金をかけるのなら、酒に金をかけるほうがいいと聞いたことがある。

今時、携帯を持っていないほうが珍しいのだが、吟ネエは持っていなくてもいいと思った。

縛りがないのが、吟ネエだからだ。

そう、携帯電話とは、繋がりを示す糸の一種。

どんな場所にも見えぬ糸を繋げることが出来る。

現代は糸が絡まり続け、いらぬ糸にまで繋がってしまう負の問題もある。

便利といっちゃ便利なんだけどな。

それ故に、吟ネエを探す時は非常に困る。

でも、吟ネエを見つける事は、楽しみでもあった。

脱線してしまっているな。

とにかく、性欲を発散させた吟ネエは、ゆっくりしたいのかもしれない。

ならば、人が寄り付かない場所にいるだろう。

俺って、本当にストーカーに近い思想を持っているな。

「じゃあ、屋上辺り、いってみるか」

「俺は体育館裏あたりにいると思うんですけどね」

「分かれて探すか?」

「多分、俺が正しいっすよ」

「そうかよ」

一緒に行動しているだけで、青筋が立っているのが解る。

男子生徒はさっさと階段を下りていった。

残った俺はゆっくりながらに動き始める。

胃にきついのだが、階段を上って屋上へと出る。

学校では一番空に近い場所で、青々とした顔をしている。

吟ネエの姿は見当たらない。

「ん?」

どこからか、猫の声が聞こえてくるようだ。