学園(吟)

吟ネエの元に行く前に、空かした腹を満たしておきたい。

腹が減った状態で行って、更なる衝撃を受ければ倒れる事は間違いない。

という事で、俺と男子生徒は食堂でラーメンを啜っている。

「葉桜先輩、俺、早く吟先輩に会いたいんですけど」

「俺だって会いたいさ。だけど、腹が減ってると、行動に支障をきたすんだよ」

「ほんとっすかあ?」

「早く会いたいのなら、黙って食うこった」

本来ならば、男子生徒が俺に合わせる必要なんてどこにもないんだがな。

俺はいきり立つ精神を食事にぶつける。

TOMATOのことなど、トウの昔に脳の底に沈んでいた。

ショックの大きさからか、視界に映る何もかもが灰色がかって見え始めている。

ラーメンの色でさえ灰色だ。

味覚も障害が出ていて、味なんて解らない。

更に言えば、拒絶する食道にラーメンを無理矢理流し込んでいるくらいだ。

胃が拒もうとも、食わなけりゃならない。

食って、少しでも冷静さを身に付けておきたい。

「く」

まだだ。

まだ諦めちゃならない。

絶対的自信など、どこにもない。

だけど、俺の本心は諦めちゃいけないと言っている。

「先輩、無理して食ってないっすか?」

俺よりも先にラーメンの器を空にした男子生徒が、俺の様子を伺っている。

「してねえぜ」

「それならいいんすけど、早くしてくださいよ」

「解ってるから、急かすなよ」

俺は、少なくなったラーメンを一気に食い尽くす。

汁を飲み干し、食堂のカウンターに器を返却した。

これから、真相を確かめにいかなくてはならない。

吟ネエの口から聞くまでは、五感に障害が出ようが崩れない。

「ま、葉桜先輩が執着するのは解らないっすけど、同じ事を言うと思いますけどね」

男子生徒は調子に乗り始めているのか。

同じ事を何度も言わなくていい。