学園(吟)

出産までは高校生活に何ら変わりはない。

後輩から告白される事もなければ、部活で優勝したなどという盛り上がりがあるわけでもない。

そもそも、部活に入っていない。

行事をこなすだけの毎日になってしまっていた。

同級生に友人がいないわけでもないが、遊びに行く回数は少なくなっていた。

学校が終わってからは、吟ネエの様子を見に帰る日が多くなったからだ。

今後の生活の足しにしようとバイトもし始める。

そうしている内に数ヶ月が経ち、吟ネエは女の子を出産したのだ。

出産時は本当に無事に終わるかどうか心配で仕方なかったが、生み出したときには安心の一言であった。

吟ネエに抱かれるわが子を見ると、感動する。

こんなに大きな物体を産み落としたのだから、吟ネエにすれば大変だっただろう。

自分の娘を見つめる吟ネエの目はとても柔らかかった。

始めてみる表情だったかもしれない。

父さんや母さんも万歳しながらも、渚さんと吟ネエの出産を喜んでいた。

名前はというと、夕方に生まれたから、吟ネエの子供が『夕乃』、渚さんの子供が『夕子』だ。

一週間は赤ん坊の様子を見るという事で病院で過ごし、その後に退院した。

退院してからしばらくは、赤ん坊につきっきりになった。

母乳を上げたり、おしめを変えたり、散歩をしたり。

夜鳴きをする赤子もあやした。

渚さんは二人目ゆえに落ち着いており、吟ネエに色々指南を施していた。

そして、常に赤ん坊と共にある生活になった。

もちろん、吟ネエも母親らしいところを見せる。

前までしなかった料理をし始めたり、家事もこなす。

吟ネエにしたら、わが子のためとはいえ、縛られる生活は苦しいかもしれない。

誰だってそうだ。

苦しい物は苦しいし、辛い物は辛い。

だからといって、育児放棄は許されない。

親というものはわが子が大人になるまで育て、導く責任があるのだ。