学園(吟)

「じゃあ、ウチラ、行くから」

梓さんは六老さんの腕を引いて、遠ざかっていく。

吟ネエに近づけると不味いという事は肌で解っているようだ。

「吟ネエ、一旦、帰ろう」

梓さんのいない店では、買えるはずもない。

「アチシの、楽しみが」

そんなにお酒が飲めない事が辛いのか。。

「俺が渚さんに頼んで見るから、そんなに悲しい顔をしないでよ」

吟ネエの肩を持って、前に進める。

しょぼくれた吟ネエの顔もすごく可愛く見える。

少し、情緒不安定になっているのかもしれない。

今まで、悲しい顔なんてした事なかった。

俺達はのんびり家に帰る。

ずっと、沈み気味な吟ネエも気になった。

何とかしてやりたい。

「渚さん!」

吟ネエを部屋に戻してから、渚さんの前に立つ。

「そんなに切羽詰まったような顔をして、どうかしたんですか?」

「お願いがあるんだ!」

「お願い、ですか。何でしょう?」

普段、あまりお願いという言葉を使わない俺に驚いているようだ。

「吟ネエのために、お酒を買ってきて欲しい!」

「あら、今日は自分で買いにいかなかったんですね」

「今日は、その、店番の人が違うみたいで」

「そうだったんですか。でも、私としては、あまり吟さんにお酒はオススメしたくありません」

確かに、妊娠中と解っていて、勧めるのは馬鹿といっていい。