「なっちゃん」

突然、姉ちゃんが、やけに
改まった口調で言った。


な、何…?

 「言わなくてもわかると
 思うけど、なっちゃんは
 女の子だし、秘密契約なの。
 だからお客様はもちろん、
 他のホストたちにも、自分
 が女の子ってことは

 絶対に、秘密にしなきゃ
 いけないわ」

 「まあ、男ばっかの職場
 だしね~」

俊広さんが、おどけた調子で
言う。

 「そのかわり、時給は弾むよ。
 しかも、接客業って言っても
 座ってるだけだから、普通の
 バイトよりだいぶ楽だし」

 「秘密に…できるわよね」

姉ちゃんがきく。

 「できるもできないも、
 やるしかないじゃない」


あたしには、他の手段はない
わけだし。

月末払いじゃなく、すぐに
お金が必要なんだもの。

男装しないといけなかろう
と、周りが男の人ばっかりで
あろうと、贅沢は言えない。


 「では、これからなっちゃん
 はあたしの弟ってことで!」

姉ちゃんが笑う。

 「じゃあ、そろそろ時間
 だから行こうか」