「あ、菜都希ちゃん
 かっこいいじゃーん!」

入ってきたのは、姉ちゃんの
ダンナの俊広さん。

長身で、サーモンピンクの
カッターに落ち着いたグレーの
スーツを着ていた。
彫りの深い顔立ち。

久しぶりに見たけど、いつ
見ても美形で、姉ちゃんと
お似合い。


 「これなら男として働いても
 全然大丈夫だなぁ。
 さすが波瑠奈」

 「でしょ?
 良かったね、なっちゃん」


全然良くないんですけど…


 「ところで、俊広は何の用
 で来たの?」

あたしの気持ちを全く無視で
話を進める姉ちゃん。

 「あ、うん」

俊広さんは持っていた茶封筒
から、小さな紙を取り出した。

 「はい、菜都希ちゃん。
 これ」

 「え…?」

紙を受け取ると、そこには

“夏輝”

の文字。ナツキ…?


 「それ、菜都希ちゃんの名刺
 ね。
 “菜都希”じゃ、女の子って
 わかっちゃいそうだし、
 男っぽく“夏輝”で」


……どうやら、あたしは本気で
このホストクラブで働くことに
なったようです………。